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偏光顕微鏡下での造岩鉱物の性質

現在,世界で4700種ほど知られている鉱物のうち,一般的な岩石を構成する主なものは40種程度で,特にそれを造岩鉱物という。

以下に挙げたものはやや特殊なものもあるが,一般的な岩石に出現しうるものである。


ケイ酸鉱物・ケイ酸塩鉱物

二酸化ケイ素(SiO2)の鉱物
平行ニコル:無色。輪郭・割れ目は目立たない。へき開は認められない。
クロスニコル:干渉色は1次の灰・白程度で低い(石英は淡黄色のこともある)。
石英 トリディマイト クリストバライト
長石類
平行ニコル:
無色。輪郭・割れ目は目立たない。へき開は(001)方向に完全,(010)方向に明瞭で,それが直交または90°に近い角度で交わる(灰長石はへき開は認めにくい場合がある)。
クロスニコル:干渉色は1次の灰・白程度で低い(灰長石は淡黄〜黄色のこともある)。
アルカリ長石 斜長石
準長石類
日本の岩石にはまれで,主にアルカリ岩に産する。
ネフェリン(霞石)

ソーダライト〜アウイン

オケルマナイト〜ゲーレン石

雲母類
平行ニコル:
1方向(001)のへき開が極めて完全で,有色のものは多色性が顕著。
クロスニコル:いずれも直消光。真珠雲母を除き干渉色が高く3次に達する。伸長は正。
黒雲母 白雲母 ソーダ雲母 真珠雲母(マーガライト)
雲母類以外のフィロケイ酸塩鉱物
平行ニコル:
緑泥石・スメクタイトは1方向(001)のへき開が顕著でくすんだ緑色や緑褐色を帯びることが多く,やや多色性がある。
クロスニコル:へき開や結晶の伸長方向に対し直消光。なお,緑泥石・蛇紋石は干渉色は1次程度で低い(緑泥石は褐色などの異常干渉色を示すこと有り)。
緑泥石 蛇紋石 スメクタイト ぶどう石
角閃石類
平行ニコル:伸び方向に平行な2方向のへき開が顕著でそれは互いに約120°(補角60°)に交わる。多くは有色で多色性は強い。屈折率は雲母類・緑泥石より高く,輝石類よりわずかに低い。
クロスニコル:c軸に直角方向から見た場合,へき開・結晶の伸長方向に対し,最大約20°。リーベック閃石などを除き,伸長は正。
普通角閃石 アクチノ閃石 藍閃石〜
リーベック閃石
輝石類
平行ニコル:伸び方向に平行な2方向のへき開があり,それは互いに約90°に交わる。雲母類・角閃石類より屈折率が高く,輪郭や割れ目がややはっきり見える。エジリンを除き,色は角閃石類より淡く(無色に近い場合も多い),多色性も弱い。
クロスニコル:c軸に直角方向から見た場合,へき開・結晶の伸長方向に対し頑火輝石(斜方輝石)は直消光,その他の単斜輝石は最大約40°(ただし,エジリンは数°程度)。
普通輝石 クリノエンスタタイト
〜Caクリノエンスタタイト
頑火輝石(斜方輝石) エジリン(錐輝石) ひすい輝石
透輝石〜灰鉄輝石
かんらん石類
平行ニコル:粒状が多く,おおむね無色に近い。へき開はあまり認められない。屈折率が高く(輝石類より高い),輪郭や割れ目がはっきり見える。
クロスニコル:干渉色は高く3次に達する(特殊なかんらん石であるモンチセライトは1次程度)。
かんらん石(苦土かんらん石) テフロ石(マンガンかんらん石) モンチセライト
ざくろ石類
平行ニコル:粒状が多い。へき開は認められない。原子配列が密なので,自形〜半自形になりやすく,かつ,屈折率がかなり高く輪郭や割れ目がはっきり見え,ざらついて見えることも多い。アルマンディン成分に富むものは明らかに赤味がある。
クロスニコル:等方体で暗黒。ただし,スカルンなどから産するグロッシュラー〜アンドラダイト中間体は1次の白程度の干渉色を示す。
パイロープ アルマンディン スペサルティン

グロッシュラー 〜 アンドラダイト

チタンざくろ石
灰れん石類
平行ニコル:
伸び方向に平行な1方向のへき開がしばしば見られる。遷移元素に乏しい灰れん石・斜灰れん石は無色。雲母類・角閃石類より屈折率がやや高く,輪郭や割れ目がはっきり見える。
クロスニコル:灰れん石・斜灰れん石は干渉色は1次の白程度だが,それ以外は2次以上に達する。b軸に直角方向から見た場合,へき開・結晶の伸長方向に対し直消光で,伸長は正の場合も負の場合もある(b=Y)。
灰れん石 斜灰れん石 緑れん石 紅れん石 褐れん石
Al2SiO5鉱物
平行ニコル:
へき開は明瞭〜顕著。無色が多いが,屈折率は石英や長石類よりも高く輪郭や割れ目がはっきり見える(原子配列は紅柱石→ケイ線石→藍晶石の順に密で,屈折率もその順に高い)。
クロスニコル:紅柱石・ケイ線石はc軸に直角方向から見た場合,へき開・結晶の伸長方向に対し,直消光だが,藍晶石は数〜30°程度の斜消光。
紅柱石 ケイ線石 藍晶石
その他のケイ酸塩鉱物 ローソン石 十字石 菫青石 ケイ灰石 ペクトライト
ベスブ石 電気石類 沸石類 ジルコン くさび石(スフェーン)



炭酸塩鉱物・リン酸塩鉱物・ホウ酸塩鉱物・フッ化鉱物

炭酸塩鉱物
平行ニコル:
結晶方位による屈折率の違いが大きく,ステージを回すと個々の粒子の輪郭や割れ目がはっきり見えたり目立たなくなったりする。方解石・ドロマイト・マグネサイトなどの方解石型の結晶構造のものは3方向にへき開が極めて完全。
クロスニコル:干渉色は極めて高く8次以上に達し,虹色〜濁った黄色に見える。
方解石 ドロマイト
リン酸塩鉱物
リン灰石,モナズ石以外は通常の造岩鉱物ではない。
リン灰石
ホウ酸塩鉱物
造岩鉱物としてはあまり普通ではない。
平行ニコル:
典型元素だけからなるものは無色。
クロスニコル:3配位のB(3角形のホウ酸基:BO3)からなるものは干渉色はやや高く2次以上に達し,4配位のB(4面体のホウ酸基)からなるものは干渉色は低く1次程度。
小藤石

フッ化鉱物
造岩鉱物としてはあまり普通ではない。

蛍石



酸化鉱物 不透明なものは反射光で観察する。

コランダム スピネル クロムスピネル ルチル ペロブスカイト パイロクロア
磁鉄鉱(不透明 反射光で観察) 赤鉄鉱(不透明 反射光で観察) チタン鉄鉱(不透明 反射光で観察) 褐鉄鉱



元素鉱物・硫化鉱物 不透明なので反射光で観察する。

石墨 磁硫鉄鉱 黄鉄鉱